初乳:仔犬にとって大切な初めてのミルク
近年、私達は仔犬が母親から受け継ぐ免疫に対して、たくさんの誤解があることが分かりました。
産まれて間もない仔犬は免疫システムが十分に発達していません。
従って、仔犬は殆どの感染性の病原体や薬剤に対して完全に感受性を持っています。
もしも、深刻な病気と遭遇すれば、おそらく死亡してしまうでしょう。
しかし幸運にも、これはさほど問題ではありません。
なぜなら、自然力は新生児に保護作用を与える方法を作り出したからです
それが、母親から初めてもらう初乳です。
能動免疫(のうどうめんえき)
人間または動物が自然な方法、またはワクチン接種によって病原体と接触すると有機体、またはその一部が動物の免疫システムの
細胞と相互に作用します。
これらの細胞は抗体をつくり(タンパク質分子)これは動物の体に属し、そして外来性の有機体を識別し破壊します。
体は病原体を直接殺す細胞を活性化させます。
個体が病原体から効果的に保護する免疫システムがあると病原体に対して有効な抗体を作り出すと言われています。
動物自身の免疫システムがその保護作用を供給している場合、能動免疫と呼ばれます。
受動免疫(受身免疫)
動物が自身の防御システムを発達させるよりも他の動物より生体防御機構を受け取ること
(抗体と/またはリンパ細胞)を受動免疫と呼びます。
胎仔が胎盤を通して抗体を受け取る、新生児が母親の初乳を通して抗体を受け取る、毒蛇に噛まれた傷の治療に
用いる抗蛇毒素、そして、リンパ細胞の置換を手助けする為の骨髄移植はすべて受動免疫に含まれます。
受動免疫の損失は動物の体にはそれを補充する能力がないということです(骨髄移植の場合を除いて)
動物が受け取った抗体が高齢化と共に崩壊する、または病原体を攻撃する為に使い果たした場合、動物の体は
それを置換することができません。
しかしながら、能動免疫の場合、免疫システムが同じ有機体と接触した場合は抗体はもっと産生されます。
能動免疫は自己永続化型だが、受動免疫は違います。
二種類の受動免疫が幼い仔犬を保護します。
母親より受け継ぐすべての抗体、血液または初乳のどちらの経由でも母性抗体(移行抗体)と呼ばれます。
注意しなければならないのは、仔犬は母親がつい最近ワクチンを接種した、または曝された病気に対する抗体
のみを受け取るということです。
例えば、パルボウイルスに対するワクチンを接種していない、または曝されていない雌犬は仔犬に移行できる
パルボウイルスに対する抗体がありません。
その際、仔犬はパルボウイルスに感染する感受性が出来てしまいます。
子宮内の受動免疫(胎盤を通して)
幾つかの種では、母親の血液を通って胎盤(胎仔が母親と繋がっている器官)より感染防御抗体が母胎の胎仔に移行します。
従って、幼い動物は産まれた時からこの保護作用を保持していることになります。
この仔はこの仔自身のシステムが機能する前に遭遇する可能性のある病気の状況から保護してくれる免疫を持っています。
人間はこの方法で母親より受け取る免疫の殆どを貰います。
初乳からの受動免疫
犬や猫は他のたくさんの哺乳動物のように初乳経由で新生児に母親の抗体の大部分を移行します。
誕生後最初の24時間の流乳と限定された初乳は高度に濃縮されたタンパク質抗体分子の混合物である。
仔犬はこれらの抗体を腸壁を通して血液システムに吸収します。
変化せずに腸壁を渡る非常に大きなタンパク質分子の吸収は新生児の特性です。
動物が成熟すると、消化器系がタンパク質分子を加水分解(水解)します。
これは水の分子がタンパク質分子に加えられ、小さな切片に分解する工程です。
まだよく分かっていない工程ですが、新生児は変化していない大きな抗体を吸収することができます。
これは大切なことでもあります。
なぜならもし抗体が加水分解され、小さく分解されたら細菌やウイルスを破壊する能力を失ってしまうからです。
通常、仔犬は生後1日になる前に吸収能力を失い、すべての大きいタンパク質は加水分解されてしまいます。
従って、例え母親が初乳抗体を産生し続けても破壊され、幼い動物の保護作用を産生しません。
ここでよく誤解される点を明白にする必要があります。
述べたとおり、保護作用抗体を含む初乳は乳流の最初の24時間にだけ存在し、新生児は生後1日未満で
その時間内に授乳がなければ初乳免疫を得ることができません。
それ以降、どんなに授乳しても抗体を受け取ることはありません。
多くのブリーダーや飼い主は長く授乳すれば、それだけ多くの保護作用を得ると信じています。
それは大きな間違いです。
覚えておいてください。
新生児は消化管が不変の大きなタンパク質分子を吸収する能力を失った後では抗体を吸収できません。
動物が持つすべての保護作用は誕生の1日に受け取ったものだけです。
その後はワクチン接種によってのみ増強できることになります。
初乳からの保護作用の水準と長さ
初乳に存在する免疫グロブリン(抗体)の量は母親の持っている抗体の水準と直接比例します。
その動物が持つ量を定量化する為の方法で力価(滴定量)をよく用います。
検査は問題の動物の血液を用いて行います、力価が高いほど多くの抗体が存在していることになります。
高い力価を持つ母親は胎盤を通して、乳より高い濃度の免疫グロブリンを移行します。
よりたくさんの抗体の量を含む乳を摂取した新生児は、より多くの抗体を吸収することができます。
従って、血液中に高い濃度の免疫グロブリンを持つことになります。
タンパク質分子はゆっくりと、そして異なる割合で崩壊していくので、これらの初乳分子の高い量を持つ新生児はより長い期間
この保護作用を持っていることになります。
仔犬に多くの保護作用を移行したいので、繁殖する前に雌犬が高い抗体力価を持っていることに注意したいですね。
ジステンパー、パルボウイルスとコロナウイルスのような一般的に我々がワクチン接種を行う病気に対するより高い水準の
保護作用をより長い期間所有することになります。
感受性の空白時間(期間)
幼い動物が効果的に免疫される年齢は、母親より受け取った抗体保護作用の量に比例します。
幼い動物の血流に高い水準の母性抗体が存在すると、ワクチンの有効性を遮断してしまいます。
その動物の母性抗体が十分に低水準に下がれば、ワクチン接種を通して免疫(病気に対する保護作用)が産生されます。
母親からの抗体は、通常新生児の血液を数週間循環します。
母性抗体が病気に対しての保護作用を与えるには低すぎる、しかしワクチンが働くには高すぎる期間が数日から数週間あります。
この期間を感受性の空白期間と呼びます。
ワクチン接種をしたにもかかわらず、幼い動物が病気にかかる可能性のある期間のことです。
感受性の空白の長さや時期は兄弟でも異なります。
ワクチンに反応し、保護作用を発達させる(免疫された)年齢を知る為の調査を様々な仔犬の断面を用いて行いましたが、幅広い期間の結果となりました。
生後6週間の仔犬では25%程しか免疫されません。
生後9週間では40%の仔犬がワクチンに反応し、保護作用が働きました。
生後16週間では60%まで増え、生後18週間になれば95%の仔犬に免疫が産生されました。
見てわかるように、受動免疫が存在できる時期、個々の動物がワクチン接種を受けるべき時期を特定することはとても不可能です。
あまりにも多くの可変性があります。
血液検査を行っても、個々の兄弟は異なった力価を持っているでしょう。
より多くの抗体を吸収した仔もいれば、他の仔よりも早く抗体が崩壊した仔もいます。
または有害な細菌やウイルスに遭遇した時に抗体の一部を使用した仔がいるかもしれません。
そのうえ、幼い動物は一つの病気に対しての保護力価があっても、他のものに対しては足りない場合があるかもしれません。
近年では幾つかの新しいワクチンには、幼い動物の中に母性抗体が存在していても、能動免疫を刺激できるものもあります。
ワクチンが改善されれば、より早い内から仔犬を守ることが出来るかもしれません。
初乳のその他の機能
より多くの初乳を受け取らないと、新生児が生存できる確率はぐんと減ります。
保護作用と栄養作用の資源だけでなく、幼い動物の体液水準を常に保つことも重要なことです。
正常に作用する為に循環器システム(例えば、心臓や血液システム)は高い量の体液を必要とします。
新生児は歯茎などの粘膜が湿性であれば、きちんと水和されていることになります。
新生児の体重の75~80%が水です。
仔犬にとって、脱水症状は深刻な状況です。
結論
仔犬は生きる為には最初の24時間の内に出来るだけ多くの初乳を受け取ることが非常に重要なことです。
その動物の為の保護作用、栄養素、ビタミンと体液を供給します。
新生児が初乳を受け取れるように気をつける事は、その仔が幸せで健康な生涯を送る為の第一歩です。
アニマルブリーダー 渡邉 浩行 アニマルナース MICHIKO,JENNIFER,PARTRIDGE ( ミチコ ジェニファー パートリッジ )